解説 | 診療報酬と3省2ガイドライン

在宅医療情報連携加算のICT要件と3省2ガイドライン— 訪問診療の連携ツールを作る・選ぶときの7項目【事業者・医療機関向け】

公開: 2026年10月 | 執筆: HealthLegal | 一次資料(令和8年度診療報酬改定の告示・施設基準通知・留意事項通知、厚生労働省 医療情報システム安全管理ガイドライン第7.0版 Q&A、HISPRO「医療情報連携において、SNSを利用する際に気を付けるべき事項」)と突合のうえ作成

3行まとめ

  • 1.令和8年度診療報酬改定で、在宅医療情報連携加算(月1回・100点)の施設基準に、ICTの要件ア〜キの7項目が書き込まれました。令和6年度の施設基準通知の本文にはなかった項目です。同じ7項目は、病院・診療所の訪問看護の訪問看護医療情報連携加算の施設基準にも入っています。
  • 2.7項目のうち5つ(ア〜オ)は連携ツールの機能、残りの2つは安全管理です。カはHISPROの「プライベートSNS」の注意事項を、キは厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(3省2ガイドライン)を「参考とすること」としています。
  • 3.ガイドライン第7.0版のQ&A(令和8年9月)は、SNS等のWebサービスを使う医療機関に、事業者からMDS/SDSやサービス仕様適合開示書を入手し、リスク評価の上で採否を決めるよう書いています。連携ツールを作る事業者にとっては、機能の説明だけでなく、安全管理を文書で説明できることが導入の条件になっていきます。

1. 何が変わったか —— 施設基準にICTの7項目が入った

在宅医療情報連携加算は、訪問診療を行う医師が、訪問看護師・薬剤師・ケアマネジャーなど他の機関の職種がICTで記録した情報を取得・活用して計画的な医学管理を行った場合に、月1回100点を算定できる加算です(在宅時医学総合管理料の注15・施設入居時等医学総合管理料・在宅がん医療総合診療料の注9)。令和6年度改定で新設されました。

令和8年度改定の施設基準通知では、医療機関が持つべき「ICTを用いて共有し、常に確認できる体制」について、その体制が満たすべき要件がア〜キの7項目として本文に書き込まれました。令和6年度の同じ通知(第15の4)の本文には、この7項目はありませんでした。

要件(施設基準通知の要旨) 区分
ア記録された診療情報等は、連携機関間の協議に基づき、一元的に管理されたサーバーで保管されていること必須
イ患者・家族・連携機関(参加者)のうち、患者が同意した者のみで共有がICTを用いて行われること必須
ウ参加者の範囲を随時設定できること。情報の内容に応じて共有範囲を任意に設定できるICTが望ましい必須(後段は望ましい)
エ参加者が常時、閲覧・取得できること。情報が患者ごとに時系列で速やかに表示されるICTを用いること必須
オ参加者が常時、必要な診療情報等を共有できること。文字だけでなく画像・映像も共有できるICTが望ましい必須(後段は望ましい)
カ体制の整備にあたって、HISPROの「医療情報連携において、SNSを利用する際に気を付けるべき事項」のプライベートSNSに係る事項を参考とすること参考
キ安全な通信環境を確保するために、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を参考とすること参考

(出所: 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて〔令和8年3月5日保医発0305第8号・1007訂正後〕第15の4 1(2)。原文は「全ての要件を満たすものであること」としています)

同じ7項目は、病院・診療所が行う訪問看護の訪問看護医療情報連携加算(在宅患者訪問看護・指導料の注19)の施設基準(第16の2 6)にも、同じ文言で入っています。届出の様式(様式19の3)には、カとキの2項目を「参考としていること」に○をつける欄があります。

2. 7項目は「機能の5項目」と「安全管理の2項目」に分かれる

7項目を読むと、性格の違う2つのグループに分かれます。

  • ア〜オ(機能): 一元管理されたサーバー、同意した人だけで共有、参加者の範囲の設定、患者ごとの時系列表示、常時の共有。連携ツールの画面と設定で確かめられる要件です。
  • カ・キ(安全管理): HISPROのプライベートSNSの注意事項と、3省2ガイドラインを「参考とする」。画面を見ても分からず、運用ルールと文書で説明するしかない要件です。

ア〜オは、患者ごとのチャンネルやタイムラインを持つ医療介護向けの連携ツールであれば、多くはすでに備えている機能です。差がつくのはカとキです。「参考とする」は緩い言い方に見えますが、医療機関は届出の際に「参考としている」と表明する立場になります。医療機関がそう言えるためには、ツールを提供する事業者から、何をどう参考にしているかの説明を受けている必要があります。

3. カ: HISPROの「プライベートSNS」で何を確かめられるか

HISPROの資料(2016年)は、SNSをパブリックSNS(公開型)とプライベートSNS(非公開型)に分け、FacebookやLINEのようなパブリックSNSは「患者や家族等の自分自身の情報ではない機微な情報を連携させるためのツールとしては不適切」としています。プライベートSNSは、あらかじめ決められた範囲の連携体だけで使い、一般のユーザーは加入できず、アクセスコントロールが必ず行われる環境です。

そのうえで資料は、患者・家族への説明と同意、職員への教育を「必ず守らなければいけない事項」とし、確認すべき事項を契約面・運用面・技術面の3つに分けて挙げています。

観点 主な確認事項(資料の要旨) 事業者が答えを用意しておくもの
契約面個人情報保護方針、苦情窓口、サーバーに蓄積された情報の目的外利用がないこと、責任分界点、SLAとその見直し、サービスの継続性利用規約・データの取扱い(目的外利用をしないこと)、責任分界の表、SLA、サービス終了時のデータの扱い
運用面プライベートSNSであること、リスク分析の上で対応を決めていること、共有範囲(アクセス権)の設定、職種に応じた閲覧、保存される情報の明確化、端末の管理と紛失時の対応、利用ルールの教育初期設定と権限モデルの説明、医療機関向けの運用ルールのひな形、端末紛失時の手順
技術面ネットワークの特定、改ざん・盗聴・なりすましの防止、ID/PWによる識別・認証(電子証明書ならなお良い)、暗号化、端末の利用者認証、アクセス権の設定、アクセスログの取得通信・保存時の暗号化、認証方式(多要素認証の有無)、ログの取得と保管期間

資料自身が「契約面、運用面、技術面のいずれかで漏れなく対策を打つ必要がある」と書いているように、カは技術だけでは満たせません。とくに責任分界・SLA・サービスの継続性は、事業者が文書で示さない限り、医療機関には確かめようがない項目です。

4. キ: 3省2ガイドラインを「参考とする」とは何をすることか

4.1 医療機関には、もともと安全管理の義務がある

医療法施行規則第14条第2項は、病院・診療所の管理者に、医療の提供に著しい支障を及ぼすおそれがないようサイバーセキュリティを確保するために必要な措置を講じることを求めています(令和5年4月施行)。その措置の参照先が、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」です。在宅医療情報連携加算のキは、この既存の義務を、連携ツールについても確認するよう求めるものと読めます。

4.2 ガイドライン第7.0版Q&Aが書いていること

ガイドライン第7.0版のQ&A(令和8年9月)は、まさにこの場面を取り上げています。概説編Q10「SNS等のWebサービスを利用して医療情報をやり取りする場合、考慮するべきことはあるか」への回答の要点は次のとおりです。

  • SNS等のWebサービスは利用できるが、医療情報システムとして安全性を評価する必要がある。
  • 一般向けSNSを安易に使わず、利用前に認証、アクセス制御、通信・保存時の暗号化、ログ、保存・削除、事故対応、責任分界を確認する。
  • MDS/SDSやサービス仕様適合開示書等を事業者から入手し、リスク評価の上で採否を決める。
  • SNSの場合はとくに、HISPROの「医療情報連携において、SNSを利用する際に気を付けるべき事項」を参考に対策を講じる。

つまり、在宅医療情報連携加算のカとキは、ガイドラインのQ&Aでは一続きの手順として書かれています。医療機関は、事業者から開示書を受け取り、HISPROの観点も含めてリスクを評価し、そのうえで採用を決める。この流れのなかで、事業者が出せる文書が無ければ、医療機関は「参考としている」と言える根拠を持てません。

4.3 事業者側のガイドライン

医療機関にサービスを提供する事業者向けには、総務省・経済産業省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」(第2.0版)があります。厚労省のガイドラインとあわせて「3省2ガイドライン」と呼ばれます。サービス仕様適合開示書は、この事業者向けガイドラインに沿って、サービスの仕様と安全管理の対応状況を医療機関に示すための文書です。

5. 要件ごとに、事業者が用意しておく文書

ここまでを、7項目ごとに整理します。左の2列は施設基準、右の列は医療機関から説明を求められたときに事業者が出せるとよいものです。

要件 医療機関が確かめたいこと 事業者が用意しておくもの
ア一元管理されたサーバーで保管どこに、誰の管理で保管されるか。委託先(クラウド事業者等)はどこかデータの保管場所と委託先の一覧、構成の概要図
イ患者が同意した者のみで共有同意をどう記録し、同意のない人に見えない仕組みか同意の記録方法の説明、患者・家族向けの説明文のひな形
ウ参加者の範囲を随時設定誰がメンバーを追加・削除でき、退職者をどう外すか権限モデルの説明(管理者・メンバー・閲覧のみ等)、招待と削除の手順
エ常時閲覧・患者ごとの時系列表示患者単位でまとまって見えるか、障害時はどうなるか画面の説明、SLA(稼働率・障害時の連絡)
オ常時共有・画像や映像の共有写真・書類の扱い、端末に残るか添付ファイルの保存と削除の仕様、端末に残るデータの説明
カHISPROのプライベートSNSの事項を参考契約・運用・技術の3面で漏れがないかHISPROの観点ごとの対応表、責任分界の表、医療機関向けの運用ルールのひな形
キ3省2ガイドラインを参考開示書を入手してリスク評価できるかサービス仕様適合開示書・MDS/SDSへの回答、リスク評価の結果、事故時の連絡体制

ア〜オの説明は、多くの事業者が製品資料やFAQで書けているはずです。カとキの列は、作るのに時間がかかります。とくにサービス仕様適合開示書とリスク評価は、委託先(クラウド事業者など)を含めた構成を書き出さないと作れないため、「導入時に個別に説明します」で止まっている事業者が少なくありません。医療機関の担当者が届出の準備を始めてから作り始めると、導入が数か月単位で遅れることがあります。

6. 医療機関の側から見た7つの確認

連携ツールを選ぶ医療機関の側は、次の7つを事業者に聞くと、施設基準の7項目に沿った確認ができます。

  1. データはどこのサーバーに、誰の管理で保管されますか。委託先はどこですか(ア)
  2. 患者の同意はどう記録され、同意のない人に情報が見えない仕組みになっていますか(イ)
  3. メンバーの追加・削除は誰ができますか。退職や異動のときはどうしますか(ウ)
  4. 患者ごとに時系列で見られますか。障害のときの連絡と稼働の目標はどう決まっていますか(エ)
  5. 写真や書類はどこに保存され、職員の端末に残りますか(オ)
  6. HISPROのプライベートSNSの注意事項について、契約・運用・技術の対応を一覧で示せますか(カ)
  7. サービス仕様適合開示書(またはMDS/SDS)を出してもらえますか。リスク評価の結果はありますか(キ)

6と7に文書で答えられる事業者を選ぶと、届出のときに「参考としている」と言える根拠が手元に残ります。

7. 注意: 算定できるかどうかは、ツールだけでは決まらない

連携ツールが7項目を満たしていても、それだけで加算を算定できるわけではありません。医療機関側には、たとえば次の要件があります。

  • 診療情報等を共有している連携機関(特別の関係にあるものを除く)が5以上であること(施設基準第15の4 1(3))
  • 連携体制と実績のある連携機関の名称等を院内に掲示し、原則としてウェブサイトにも掲載すること(同(5)(6))
  • 算定には、患者の同意、訪問診療の日の記録(次回の予定日・治療方針の変更の有無など)、過去90日以内にICTで取得した他機関の記録が1つ以上あることなどが必要です(留意事項通知 C002(30))
  • 届出は様式19の3で行います

「このツールを入れれば算定できる」とは言えません。事業者が案内できるのは「施設基準のア〜キに対して、ツールと文書でこう対応している」というところまでです。算定の可否は、医療機関と地方厚生(支)局の判断になります。

8. まとめ —— 「機能がある」から「説明できる」へ

令和8年度改定で、在宅の多職種連携に使うICTは、施設基準の文言として機能(ア〜オ)と安全管理(カ・キ)の両方を問われるようになりました。安全管理の2項目は「参考とすること」という書き方ですが、ガイドライン第7.0版のQ&Aと合わせて読むと、医療機関は事業者から開示書を受け取り、リスクを評価してから採用を決めることになります。

訪問診療・訪問看護向けの連携ツールを作る事業者にとっては、機能を作り込むのと同じくらい、サービス仕様適合開示書・リスク評価・責任分界の表を先に用意しておくことが、導入のスピードを左右します。

出典(一次資料)

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言や算定の可否の判断ではありません。施設基準・算定要件は作成時点(2026年10月)の通知と突合していますが、その後の疑義解釈や訂正で変わることがあります。届出・算定の判断は、原文と地方厚生(支)局にご確認ください。

関連記事(シリーズ: 規制の一次情報を読む)

「3省2ガイドラインを参考に」と言われたら、何を出せばよいか

HealthLegalは、医療機関に連携ツール・SaaSを提供する事業者の3省2ガイドライン対応を、AWS上で医療情報システムを設計・運用してきた実務者が支援します。プライベートSNSとしての運用ルール、サービス仕様適合開示書・MDS/SDSへの回答、委託先を含めた責任分界とリスク評価を、医療機関に渡せる文書の形に整えます。初回のご相談は無料です。

お問い合わせフォームを開く

無料セルフチェック

3省2ガイドライン セルフチェック(27問・約8分)

到達率と重点項目を自動判定し、全27問のワンポイント解説つきPDF(A4・12ページ)を診断結果メールでお送りします。

セルフチェックを始める

事業化を進める人材をお探しの方へ

Healthcare Startup Board(医療・ヘルスケア領域特化の募集掲載)

薬事・開発・事業開発など、事業化を担うプロ人材の募集を掲載できます。掲載は無料で、成約しても仲介手数料はいただきません(当面)。法人化前の大学発シーズからご相談いただけます。掲載いただいた募集には、HealthLegal が医療情報ガイドライン(3省2ガイドライン)や薬事の論点整理のご相談に乗ります。

募集掲載の詳細を見る

3省2ガイドライン対応を体系的に進めたい方は 3省2ガイドライン対応パッケージ もご覧ください。